さかのぼること5ヶ月前、1月中旬。
昨夏に超絶最高のアメリカ旅行を堪能した私は、なかなか次の旅先を決められずにいました。
アメリカ旅行がこれまでの旅行の中のてっぺんになってしまい、何かの達成感に包まれてしまっていたせいで。
いつもなら、旅行後しばらくするとムクムクと次はどこに行こうかと考えだすというのに、そうならない自分がいるのははじめてのこと。
次にどこに行こうが、あの旅を超える感動というものを味わえない気がして。
さて、どうしたものか。
結構、行かなくちゃという義務感のようなものに後押しされて、次の旅行もアメリカに行こうとか、はたまたどこかのビーチに行こうかとか、子どもたちにも投げかけたりして、進んだり後戻りしたりをしばらく繰り返していました。
無理矢理に旅行先を決めてるなんて馬鹿げている?
そこまでして行くことはないのに・・
いやいや。
私が旅行に行くのは、現実逃避をしたいからにほかなりません。
旅行は、趣味も嗜好も違う夫と同居し、毎日を単調に過ごしている私の唯一の息抜きなんだと思っています。
そして、今回のコロナ禍で改めて気づきました。
私、どこかに行くと決めて、それを目途に生活しないと息が詰まってしまうんですね。
ところが、ようやく次の旅の候補を見つけ、それに向かって夢を膨らませていこうとする矢先に、世界中をコロナが支配してしまいました。
すべてが滞ってしまい、それが自分の体調にまで変化を及ぼします。
力がわかない、元気が出ない・・
こんなことは未だかつてなかったこと。
希望を持つ、目標を持つ、それにむかってただ邁進するだけの単純な私の生き方が、どん詰まりをしてしまいました。
これまで私は、いつの時もこうして生きてきたんだなあということに気づきました。
マイホームを建てる、子どもの受験、マネープランなど、それなりに真剣に目標にむかって突き進んできて、それも一区切りがついて、その後はこうして旅をすることだけが私の生きがいになったわけです。
八方がふさがり、何の計画も進まず、一歩さえ踏み出すこともできずにいるこのもどかしさ。
早くなんとか払拭したい。
でも誰も、どうすることもできない状況ですね。
というわけで、1月中旬の話に戻ります。
とりあえず目標だけは持っていないと干からびてしまう私は、真剣に旅行先を決めはじめます。
大好きなアメリカにもう一度行くか、はたまた初ヨーロッパに挑戦するかの二択に絞りました。
息子と娘は、母子旅行ではアメリカにしか行っていません。
かつて一度、娘の高校受験後に地中海クルーズを予約したことがありますが、結局キャンセルしてハワイにした経緯があります。
このクルーズキャンセルは、私の中では結構大きな出来事として心に残っています。
クルーズの予約を入れてしばらくしてからエボラ出血熱がアフリカで流行りだし、クルーズの寄港地にアフリカ大陸のチュニジアがあったことから、懸念していました。
今回のコロナをそれほど怖がっていない我が家でも、致死率が平均50%といわれているエボラを前にしたら、それはもう答えは決まっています。
結局チュニジアでは感染者は出なかったはずですが、当時はやはり怖くて、しばらく悩んだ末にキャンセルをしました。
航空券の変更に3人で9万円の支払いが生じましたが、やむなく行き先をハワイに変えました。
地中海クルーズのキャンセルは、めちゃくちゃ残念でしたが、実はこの話には続きがあります。
エボラを恐れてのキャンセルでしたが、数か月後にISの事件が勃発します。
我が家の出港地の予定だったマルセイユ辺りもかなり不穏で、やはりキャンセルは正しかったと思ってはいたのですが、ずっとあとになって、ショッキングなニュースが飛び込んできたのです。
我が家が予約を入れていた1週間後の同じクルーズ船の乗客が、チュニジアでISに襲撃され、日本人3人が犠牲となりました。
朝のニュースでそれを知り、身震いしたのを覚えています。
まったく同じ船で、1週間違うだけ。
もしかしたら、私たち3人だって巻き込まれていたかもしれないわけです。
犠牲になった方々にはお悔やみを申し上げますが、決して他人ごとではなかった自分たちの「運命」のようなものを感じました。
当時地中海クルーズに積極的だったのは私がいちばんで、子どもたちはそれほどではなく、それが功を奏したことになります。
子どもたちが超乗り気であったら、すんなりと旅行先変更はできず、事件や感染症に巻き込まれていた可能性も大きかったはずですから。
さてさて、二択に絞った行き先を、ひとつに決めます。
アメリカ行きなら、かなり心残りなRoute66に再挑戦するか、サンフランシスコ+ヨセミテ国立公園、またはニューオリンズとニューヨーク。
ヨーロッパなら、私と息子は初めてなので、3人ともに好きなディズニーがあるフランスのパリ。
私としては、アメリカ大好きなので、アメリカと答えたいところですが、ふたりの子どもの答えはもうわかっていました。
ということで、その昔、ベルサイユのばらで夢見たことのある「おフランス」へと決定いたしました。
初ヨーロッパになります♪
ところが。
1月下旬にフランス行きを決定し始めたころから、少しずつ不穏な足音が近づいてきます。
それでも2月に入って航空券を買うことにしました。
不穏な気配どころか、確実にコロナの足音が近づいてきているというのに、購入を決めたのにはワケがあります。
めちゃくちゃ格安のビジネスクラスを見つけたのです!
通常JALやエールフランスで買えば、50万円前後となるビジネスクラス。
これがなんと28万円なんです。
買わない手はありません。
カタール航空の関空発ドーハ経由パリ行き往復。
カタール航空の関空路線の発売記念ということで、キャンペーンを打っていたのです。
中東経由なので、直行便に比べるとパリに着くまで、7~10時間ほど余計に時間がかかります。
でもでも、中東の飛行機のビジネスクラスなんてあまりにゴージャスじゃないですか!
カタール航空のビジネスクラスは世界最高と言われているんですから。
ビジネスクラスはハワイ旅行で経験しましたが、この上なく楽ちん。
エコノミーはもうご老体には辛いもので、最近はもっぱらプレミアムエコノミーを選んではきましたが、やはり快適とは程遠い。
世界最高峰のビジネスクラスに、ドーハの高級ラウンジにも潜入できます。
これはもう、経験して損はない。
よし、買っちゃえ!!
ということで、ふたり分を購入。
もうひとり分は特典航空券でゲットしました。
今度こそ、3人で行ける最後の旅行になる。
だから最後は派手に行こうじゃないか!
と、息巻いていたのもつかの間。
イタリアからあっという間にヨーロッパがコロナに汚染され、悲惨な状況になっていきます。
それでも、秋には大丈夫でしょと高をくくっていたのですが。
とうとう関空からの路線をなくすという、残念なお知らせがカタールから届きます。
とほほ・・
こんなチャンス滅多にないと、喜んでゲットしたゴージャスな夢は、はかなく消えました。
泣く泣く先月キャンセル手続きをしたものの、返金はまだされていません。
8週間はかかると言われましたが、はたして56万円は無事に戻るのかな~
ちょっぴり不安です。
にしても。
先に目標を置けない日々の辛さで、生気が失われるのを感じます・・