~2022年8月29日(月)~
サンフランシスコ3日目です。
アルカトラズ島という島へ、フェリーで渡ります。
この島は、脱獄が不可能な刑務所として長い間使用されてきましたが、現在は閉鎖されています。
極悪犯が収容されていたということで、あの有名なアル・カポネもその中のひとりだったということです。
朝食をホテルでとりながら、このフェリーが出航するピア33まで、何で行こうかを話しました。
普通に、Uberで行こうか。
そこで、突然娘が。
「私、電動キックボードで行きたい!」
このひとことで、私のこの後の運命が決まってしまいました。
電動キックボードとは、これ。
助走をつけて、電動アクセルをかけると、結構な速さのスクーターのようになります。
いやな予感がしました。
私、ずっと昔にスクーターで、車に突っ込んでいったことがあるんです。
究極の不器用人間である私。
止まろうと思い、ブレーキをかけたつもりが、アクセルを戻さずにハンドルブレーキをにぎっていたため、ブレーキがほぼ利かず、そのまま激突しました。
この手の乗り物が、実に苦手なんです。
娘はそれを知ってはいたし、私もその時、不安だなあと漏らしたのですが、娘が嬉しそうにはしゃいでいたので、それ以上は言えませんでした。
ホテル周辺の道端には、このキックボードがあちこちに立てかけられています。
いくつかの業者があったようですが、その中で簡単に手続きできそうなライムという業者のアプリをスマホに入れ、パスポートやクレジットカードの情報を入力していきます。
年齢確認のために、私たちのような外国人はパスポートが必要で、逆に言えば年齢さえ確認できれば運転が可能なようです。
情報を入力するとQRコードが作成されて、それをキックボードにかざすと利用が可能になります。
もうね、この辺もみんな子ども任せです。
若者は早いです。
すべてをチャチャッとやってしまって、母には、はいどうぞとしてくれます。
以前も書いていますが、もう、若い力がないと旅行もままならないですね。
前情報もなく、知識もないものに、躊躇することもなく、自分の情報を読み取らせて、すぐに楽しむことをやってのけてしまう。
そのスピード感たるや、到底私たち世代はついていけないと思われます。
兎にも角にも、これでピア33までレッツゴーとなりました。
娘はすいすいと行き、私と息子は結構おっかなびっくりで乗り出しました。
慎重だったので、あまりスピードも出さず、フェリー乗り場までは何事もなく、案外気持ちよく風をきって、たどり着くことができました。
そこでスマホで終わりボタンをクリックして、キックボードはそのまま道の端に放置でいいようです。
ピア33に着くと、10時半の出港に、もうすでに多くの人が並んでいました。
乗船にはマスクが必要でした。
念のためにマスクをバックに入れておいて良かった・・
そうそう。
アメリカでのマスク事情。
今回のサンフランシスコもラスベガスも、ほとんどの人がマスクをしていません。
ちらほらと見かけるなあという程度。
アメリカでは、コロナは終わっている印象であり、数人の人とそういう会話をしましたが、やはりコロナは終わっていると話していました。
アメリカ人は、マスクをしてようがしてまいが、知ったことではなく、気にしている人だけが気にするといった状況のようです。
コロナ以前の、インフルエンザの流行に注意するといった感じでしょうかね。
できれば罹りたくないけれど、普通に生活はしていくよといった具合ですね。
というわけで、乗船です。
手前の小さめの船のほうに乗り込みます。
アルカトラズ島までは15分ほど。
当日は売り切れが多いと聞き、チケットはあらかじめ公式サイトで購入しておきました。
往復でひとり42ドルほどです。
船の中にはパンや飲み物が売られていて、島には何もないので、ここで飲み物を買っておきました。
そして到着。
船から降りて、刑務所内に向かって歩き始めます。
降りた途端に、なんとも表現できない臭いにおいがしました。
なんのにおい?
鳥のフンのにおいのように思いました。
海鳥の数が多く、いたるところにフンがあります。
そして、なんとも恐ろしかったのがハエです。
写真で歩いている人、ひとりひとりの背中に、10匹以上のハエがとまります。
へたをすると、胸元や背中から服の中に入ってくるんです。
もう、これには3人ともに、気持ち悪さで最後は会話すらしなくなるほどでした。
建物の中に入るとハエも少なくて、安心して観て回ることができました。
日本語のオーディオガイドを渡されて、それを聞きながら、自由に所内を歩きます。
もともと、息子と娘はここを楽しみにしていたのですが、私はまあどっちでもいいかなという感じで、正直興味はありませんでした。
刑務所を観て、何が楽しいのか。
なんとも言えない臭いにおいの中、まとわりつくハエをヒーヒー言いながら振り払うだけの苦痛の時間でしかなく、行く前も観ている間も、早く帰りたいと思っていたわけですが。
これはまた、あとで詳しく書きますが、帰りの飛行機の中で「ショーシャンクの空へ」という映画をたまたま観てしまい、アルカトラズのこの刑務所とその内容がリンクして、帰国後もなんとも私の心をとらえて離さないという日々を送ったわけで。
こんなことなら、もうちょっと詳しく観て回ればよかったと後悔しております。
子どもふたりがじっくりと観ている間、私はとっとと先に進み、ベンチに座って待っていて、ふたりと合流して、また大群のハエが待つフェリー乗り場へと向かいました。
ハエとの戦いに疲れ切って、ぐったりとしている母と娘です。
ようやく恐ろしい島から脱出をして、呼吸が楽になりました。
このあと、名物のクラムチャウダーを食べて、ホテルに戻り、荷物をピックアップして空港へ向かうという予定でした。
またもや例のキックボードに乗って、ピア39まで行こうとしていたその時でした。
私を悪夢が襲ったのです・・
フェリー乗り場まで乗ってきたということで、子どもふたりは慣れた感じで、あっという間にキックボードで走り出して行ってしまいました。
私は追いつこうとして、きっと慌てていたんだと思います。
アクセルをグンと強くかけ、その勢いでバランスを崩してしまいました。
あっと思った瞬間には、もう右側に倒れかかり、ずっと先にいる娘に聞こえるようにギャア~という大声を上げました。
娘に知らせたいという思いが、一瞬のうちに頭を巡ったのです。
同時に、歩道の地面にノーブレーキで倒れ込みました。
地面にぶつけることで、キックボードを止めたという具合です。
近くの人たちが、おおっ~!と声を上げました。
すぐに娘が駆けつけて、私を抱きかかえて、そばに寄ってきた人に大丈夫だと言い、何も知らずに先に行っている息子を電話で呼びつけました。
私はしばし放心状態。
何が起きたのかを、まずは冷静になって受け止めます。
そして、歩道に座り込んだまま、自分の体のどこを打ったのかを、静かに探り続けます。
頭は打っていない、骨折は・・していない。
手足は痛いけど動く。
ジーンズのももの部分は破れていて、手の甲とあごに擦り傷がある。
私が静かに体をチェックしている間、娘と息子がキックボードをかたずけ、Uberを呼び、私を抱きかかえるようにして、ホテルに戻りました。
ホテルのフロントで事情を話し、消毒液と絆創膏をもらい、娘とふたりでトイレで傷口の応急処置をしました。
手の甲に2か所と、膝に3か所、擦り傷がありました。
その間、空港へ行く車に待っていてもらっていたので、慌てて処置を済ませ、フロントにお礼を言って、車に乗り込みました。
なんだかバタバタとしながら、このはじめてのサンフランシスコをあとにしました。
残念ながら、この騒ぎの中のどこかで、気に入って買ったかわいいパーカーを無くしてきてしまったことにも、帰国してから気づきました・・
サンフランシスコの空港に着いて、ようやく3人ともひと息ついたという感じでした。
まったく、お母さんたら・・
そう言って、笑うことができました。
笑ったら、体中が途端に痛くなってきたのを感じました。
昨年の自転車事故からようやく立ち直った私の体は、またもや不自由になってしまったわけです。
しかしながら、悪運の強い私です。
誰も巻き込むことなく、柱に激突することもなく、こうして次の場所へ向かうことができるわけですから。
ひきつった笑みを浮かべて、足を引きずりながら、次の街へと飛び立ちます。