3月末に、息子が発症したノロウイルス感染症。
通常は冬場に流行するらしいですが、今年は発生率が高く、期間も長びいているとメディアが報じています。
こんなふうにアナウンスされると、途端に多くの人が怖がり、マスクをして、他人との接触を怖がり始めます。
特にコロナ後は、多くの人がこういう情報にとても敏感になって、ウイルスや感染症という言葉に、過敏に反応するようになりましたね。
私のような我が道を行く人間さえも、少なからずそれは感じています。
やたらビビりになったなあって。
自分や家族のちょっとした体調の変化に、不安を感じるようになりました。
人の体にはしっかりとした免疫力もあるし、異物を取り除く仕組みも出来上がっていて、大きな病気や事故でない限り、自分の体を信じるしかない。
そう、それはわかってはいますけど。
それでも多くの場面で、必要以上に不安に感じてしまう。
余計なコロナの置き土産ですね。
ということで。
コロナ禍でよく耳にした、「正しく恐れる」。
今回は、ノロウイルスについて、よくわからなかった自分のためにも、このウイルスに対する正しい恐れ方を、自分なりに追求してみたいと思います。
その昔、かれこれ30年以上も前の話ですが、私もこのノロウイルスとやらに感染しています。
当時は、ノロウイルスなんて言葉はあまり聞いたことはなく、ひとまとめに食中毒とされていました。
原因はおそらく息子と同じく生カキだと思われ、今ならノロウイルスによる食中毒ということになります。
あの時の私は、息子の症状をはるかに超えていて、完全な脱水症状を起こしてしまい、死に至る一歩手前でした。
ある日のこと。
夫とその友達夫婦と4人で食事へ行き、生カキを食べて、その翌日も一緒に行動して、夜になって帰宅しました。
普通に就寝後、夜中の2時か3時ごろのことでした。
突然、お腹がキーンと鳴ったのです。
いきなりの下痢。
トイレに駆け込んで、水状の便が出たと思ったら、それに続いて嘔吐。
吐いた時、お腹の肉が波打って、その刺激でまた下痢になる、それが繰り返されました。
何度も何度も。
そのうち、のどがカラカラになり、焼かれるようになってきたので、水を飲みました。
飲んだ途端に、すぐ嘔吐。
それでものどが苦しくて、わずかに潤す程度の水を口にしてもまた嘔吐。
もう出すものもなくなり、胃液のようなものが出るしかないのですが。
のどは完全に焼け付くようになり、あまりにそれがつらくて、ガムを嚙めば少しはのどが潤せるかもと思いつきました。
でも、それまでは気にしたことがなかったけれど、ガムって、唾液で伸びるんですね。
脱水症状を起こしている私の口の中は唾液が全くない状態であり、当然、ガムは固く粉々になったまま。
口から吐き出しました。
のどをこのままフォークで突き刺そうと思うくらい、苦しくて。
もう限界だと思い、格闘開始から2時間ほどたって、隣に寝ている夫を起こして、病院へ連れていってほしいと頼みました。
夫。
「朝まで待て」
朝まで待つなら、このまま殺してくれと言いました。
そして、朝7時くらいになってからようやく夫が起きてきて、病院へ。
すぐに担架に乗せられ、治療室へ。
ドクター曰く、「もう死ぬ寸前ですよ、これ。完全な脱水症状だからね」
20代だった私たち夫婦の当時の認識なんてこんなもので、脱水症状がどういうもので、この言葉自体の恐ろしさもまったくわかりませんでした。
情報の多い今では考えられないこと。
すぐに点滴治療を受け、3日ほど入院をして、恐ろしい騒動が終わりました。
友達夫婦も、私ほどではなかったですが、体調不良を起こしていて、2日ほど会社を休んでいたということ。
謎なのは夫。
ほぼ通常運転。
これで夫も同じような症状だったら、食中毒だと判断できて、対応も早かったかもしれなかったのにね。
まあ私の場合は、こんな感じで、忘れられない経験となっています。
こんな恐ろしい破壊力を持つ、ノロウイルス。
いったいどこからやってくるのでしょうか。
大きく分けて、2つのパターンがあるようです。
まずは、カキ。
「カキにあたった」という言葉は、昔からよく聞いていて、カキはわかりやすい食中毒の代表格だったような気がします。
このカキをはじめとする、二枚貝からの感染がパターン1です。
ノロウイルスは、カキのような二枚貝の中腸線という場所に蓄積されて、それを食べた人が感染して、その便が下水を通じて海に流れ込み、プランクトンが汚染されて、それを食べたカキにまた蓄積されるというサイクルが成り立っているようです。
カキに蓄積されたウイルスですが、中心部までしっかり火を通せば、死滅させることができます。
どうしても生で食べたいという場合は、ウイルスを持っているカキかもしれないという心配をしながら食べましょうということになりますね。
同じ条件で生カキを食べても、今回の息子も、私の場合も同じく、発症しない人がいるのは、単純にそのカキがウイルスを持っていなかったのか、または、食べた人の免疫力が高かったのか、どちらかということになるんでしょうか。
実際、ウイルスを保持していても、発症しない人がいるということです。
それがもうひとつの、パターン2の感染経路になります。
実はノロウイルス、ヒトの腸の中でしか育たないウイルスなんだそうです。
まったくもって健康な便を出していて、症状なしの人であっても、腸内でノロウイルスを培養している場合もあるということ。
要するに不顕性感染というやつです。
これは、コロナの時も随分と騒がれたので、よく知られているワードですが、ウイルスを持っていながらも症状はなく、他人にはうつしてしまうかもしれないという状態の人。
ノロウイルスも同じくで、これが今、全国で多いと騒がれている感染経路です。
飲食店で、嘔吐や下痢で、ヒーヒー言っている人が調理をすることはまず無いでしょうが、不顕性感染者が調理をすることはありうることです。
自分がウイルスを持ってるなんて、思いもしないですからね。
ノロウイルスはヒトの腸内で生きているわけですから、ヒトの体内から出すとしたら便の中ということ。
唾にも尿にも、ウイルスはいません。
だから、マスクをしろとか、近くに寄るなとか、基本的にはそんな不安は不要なんです。
まあ、便や嘔吐物の処理をする場合や、吐いた後の人の口からは、飛沫感染のようなものも考えられるので、その場合はマスクも必須でしょうけど。
正しく恐れる。
まずは鉄則中の鉄則として、トイレで大便をしたら、必ず手を洗うこと。
最悪は水だけでもいいですから、しっかり手を洗うこと。
これを心がけることで、全然確率は低くなります。
それでも、他の人が排便後に、お尻を拭いた手で触ったトイレのドアノブやらには、ウイルスが付着している可能性もあり、それを触って自分の手に付着することは普通に考えられます。
だから、トイレから出るときには、自分が便を出していなくても必ず手洗いをすること。
そして、キーワードは「食品」なんです。
コロナなどの風邪ウイルスは、飛沫感染などで、口や鼻に入ると、咽頭に付着して、咳や鼻水が出て有症状となりますが、ノロウイルスの場合は、腸まで達しないとウイルスとしては未達成なんです。
じゃあ、腸まで行くためには?
そう、調理した人の手指や器具についたウイルスが食べものに付着して、それを食べた人の腸に達して発生するというわけなんですね。
だからノロウイルスは、飲食店や食品を扱う場所で、集団的な発生が起きるんです。
加熱前の食品ならいいですが、例えば加熱後に盛り付けをするだけだとか、運搬するだけだとかという作業の中で、付着してしまうこともあるわけです。
ちなみに、ノロウイルスは感染症なのか、食中毒なのか。
人から人へうつしたとしたら、感染症。
単純に、カキや汚染された食品でやられて、ノックダウンしていたら食中毒ということになります。
なので今回、息子から排出されたウイルスが、私たち家族の腸に何らかの形で入り込んで症状を出したとしたら、わたしたち家族はノロウイルス感染症ということになりますね。
ちなみに、食中毒、こんなふうに種類が豊富。
ノロウイルスは、冬場に流行しますが、食品が傷むのは夏場なので、夏場も大いに気を付けないといけません。
食中毒の中でも人から人へうつるのが、ノロウイルスとO157、赤痢菌ということです。
感染症に敏感な昨今、やっぱりこのノロウイルスはダントツで恐れられてしまいますね。
こんな感じで、今回はノロウイルスについて簡単にまとめてみました。
トイレから出たら手洗いをすること。
食べる前にも手洗いをすること。
調理をする前にも。
子どものころから、そう言われてきましたね。
先人は、やはり大事なことを伝えてきているんです。
食べ物を扱うお店では、従業員は絶対にしっかりとした手洗いをお願いしたいところ。
家庭内でも、料理をする人は手洗い、そして食べる人も手洗い。
教えられてきたとおりのことを、守る。
目くじらを立てる必要も、怖くてマスクをし続ける必要もない。
それぞれがきちんと手洗いする、ただそれだけで、高確率で防げるのがこのノロウイルスです。

