ラップランドに着いたのは、12月27日の朝。
この時期の北極圏は、太陽が昇っても、地平線上にわずかに1時間ほど移動するだけで、あっちの空が少し明るいなあと感じる程度。
到着したこの日は、天気が悪く、昼間もずっと日の落ちた夕方のような感じでした。
ビュッフェの朝食を食べた後は、ロッジに戻って、せっせとスーツケースの荷解きです。
この日は朝から雪が降ったりやんだりで、気温が高く、日中は氷点下10度を下回ることはありませんでした。
なので、想像よりもはるかに暖かく感じました。
氷点下20度くらいを予想していたので、防寒対策はばっちりです。
ヒートテックの極暖の上下、重ね着用にパーカーやベスト、ハイソックスやレッグウォーマー、スキー場で使うような手袋、耳当てと帽子、口元まで覆えるネックウォーマー、カイロ等、思いつくものは全部持ってきました。
そのうえ、サトウのごはん、みそ汁やスープ、ペットボトルの水なども持ってきているので、スーツケース4個はパンパンでした。
キッチンもあるロッジなので、宿泊が長ければ、スーパーまで買い出しに行って、シチューやスパゲッティを作ったりするのもいい感じです。
いつかまたもう一度行きたいので、その時は4~5泊して、調理などもしながらのんびりと過ごしてみたいですね。
荷解きを終えたら、借りていたスノースーツのサイズ変更をして、しばし休憩。
娘は雪に興奮して、何度も外へ出たり入ったり。
この旅行のために、自分の一眼レフにレンズや三脚のレンタルもしてきているので、たぶん3人の中で一番喜んでいるようです。

あっという間にお昼の時間になり、日本から持ってきたぶっかけ浜めしとカップみそ汁でランチ。
いや、このぶっかけ浜めし。
温かいご飯にこれをたっぷりのせて、醤油をまわしかけたら出来上がりなのですが、本当においしくて。

昨年、千葉県の浜焼きのレストランに出かけたときに、近くのショップで売っていて、休日の朝とかは、こんなので済ませようと思って買ってきたのですが、これが我が家ではヒット商品となりました。
あっという間にひと袋が無くなってしまい、ネット注文して、そのうちのひとつをこの旅行に持ってきたんです。
朝食は宿泊プランに付いているので、ランチは翌日もこれで済ませました。
持ってきて正解の便利品でしたね。
この日、申し込んでいるアクティビティは、14時半からのスノーシューウォーク。
こういう装具を足に着けて、山の雪道を歩きます。

これを着けていると、新雪でも沈まずに歩いていけるらしくて。
14時15分。レストランのレセプションで、重装備をしてスタッフを待ちます。
時間通りに60代だという男性スタッフが現れて、もうひと組のフランス人のグループと一緒に、スノーシューと頭に着けるライトを持って、バンに乗り込みます。
これが14時なの?という暗さの中、山の入口に到着。

この小屋の前でスノーシューを装着して出発。

これ、一体、何の集団でしょうか・・
想像とは違う過酷な時間が待っていることを、この時にすでに私も息子も感じてはいましたが、ふたりとも言葉にすることができませんでした。
歩き出して間もなく、この装置を着けているのに、そり滑り用の斜面を登り始めます。
うそ・・
滑ったら落ちちゃうじゃん。
フランス人グループにも、おそらく私と同じくらいの年齢の女性がいて、ふたりともヒーヒー叫びながら登りました。
もう一段上まで行く人と、ここから林に入っていく人に分かれましたが、私たち3人は迷わず林の中へ。
これ以上、上になんか登れません!
でもさ、なんか、なんか違うよねえ・・
私が選んだアクティビティは、これだったはず。
それが、これじゃまるで、夜中の捜索隊じゃない?

ここからは1時間程度、必死に一番うしろから捜索隊にくっついて、ただただ無言で歩き通しました。
何がいいのか、なぜここを歩いているのか、考えることは一切やめて、ひたすら前を歩く娘のあとについていきました。
やっとの思いで、ゴール地点。
終わりを告げられた時には、生きている間、もう二度とこのスノーシューを履くことはないと誓いました。
同じことを息子も思ったそうです。
唯一、犬のように雪が好きな娘は、エンジョイしたらしく、終始笑い声が聞こえていました。
途中、脱落した同世代?のフランス人の女性と、もっと上まで登ったチームと、全員が合流して、焚火と紅茶で温まりました。

正直、一刻も早くロッジに戻りたい私と息子でしたが、このあと、最初に登ったそり滑り用の坂で、そり滑りタイム。
人生初のそり滑りをしましたが、吹雪のような中、眼鏡が凍ったようになり、どんなふうに滑っているのかもわかりませんでした。
最後に、フランス人が写真を撮ってくれましたが、私と息子はすでに、抜け殻のような姿。

車へ行きましょうと声がかけられたときには、やっと息を吹き返し、ひと言もしゃべらずにバンに乗り込みました。
娘は相変わらず元気で、帰りの道中、ずっと若いスタッフと話が盛り上がっていました。
ロッジについて、真っ先にサウナへ。
我が家の泊まったロッジには、プライベートサウナが付いているんです。

本来は裸になって入るのですが、なにしろすぐに温まりたくて、タオルを敷いて、3人で下着姿で飛び込みました。
これがまたあたたかくて、もう最高でしたね。
温泉に入っている気分でした。
体が温まって、しばし休憩。
そして、放心状態から解放されかかった頃のこと。
いきなりすべての部屋の電気が消えました。
え?どしたの?
すぐにスマホのライトをつけて、窓を開けてみると、向かいのレストランもすべて真っ暗。

このリゾート全体が、停電になってしまっています。
はじめのうちはこのハプニングを楽しんでいましたが、10分ほどたつと寒くなってきたことに気づきました。
え・・停電だと暖房もないってことじゃん。
こりゃ困った。
あ、そういえば、サウナならまだ温かいよね?
3人でまたサウナに飛び込みました。
サウナはまだ温かくて、1時間ほどはここに居られるはず。
それから30分以上経過しましたが、何も変わりません。
スタッフが案内に来ることもなく、外で騒いでいる人もいません。
18時にレストランに予約を入れているので、とりあえずレストランへ行って見ることにしました。
レセプションを兼ねているレストランのスタッフも、ごはん?と聞いてきて、席へ普通に案内します。
暖炉のそばの席に通されて、店内を見ると、他のゲストも何ごともなかったかのように普通に過ごしています。

日本なら、こんなことはありえないなあと驚きました。
スタッフからは何の説明もなく、誰ひとり心配していないよう。
このレストランに居られれば、暖炉があるけれど、ロッジに行けば暖房が無いというのに。
夕食も、用意できるものが限られているという説明で、その中で選びましたが、オーダーの時に停電のことを聞いてみると、こんなことは滅多になく、少なくとも半年間はなかったということ。
このスタッフに、いつ復旧するかなんて聞いても仕方ないと気づき、とりあえずは自分もフィンランド人になろうと決めたところで、照明がパッと付きました。
そこに居た皆が、歓声を上げました。
よかった・・
1時間以上続いた停電に、誰も騒がず、文句も言わず。
不安が常に勝った自分が小さい人間なのか、フィンランド人の包容力が並大抵ではないのか。
なんだか思い知らされたという時間でした。
限られたメニューの中、選んだのはエビのパスタと、サーモンスープ。

マッシュルームのスープと、トナカイの肉。

トナカイの肉は、はじめて食べたのですが、臭みもなくて、食感は牛肉に似ていました。
ダントツで美味しかったが、サーモンのクリームスープ。
これは次の日もオーダーしました。
食事を済ませて、ロッジに戻り、最初に私がシャワーを浴びて、寝る準備をしていたら、次に入った娘が急に騒ぎ出しました。
熱いお湯が出ないらしく。
仕方なく、息子がレセプションへ行って説明すると、ああ、お湯が貯まるまで1時間くらいかかるかも。待ってれば出るから・・ということ。
これまた、説明はそれで終わり。
仕方なく、娘は途中で切り上げ、サウナで温まり、息子は少し時間を置いて浴びる羽目に。
翌日は普通に使えたので、おそらくあの停電が影響したものと思われます。
まあ、事故だからね、仕方ない。
あとでSNSで見つけたのですが、この場所から車で4時間ほどのロヴァニエミ空港では、悪天候のために、飛行機が72時間飛ばなかったらしく、空港で待たされたという日本人の女性が憤っている投稿がありました。
ラップランド全体が天候が悪く、きっと停電もそのせいだったのかもしれません。
真実を追求することもなく、目の前の状況をそのまま受け入れていくことが、自然と共存するということなのかもしれないですね。
そういうことを、人生で初めて知った次第・・。
しかしながら。
こんな悪天候のなか、カン違いのスノーシューウォークをして、本物の捜索隊が出動しなくて済んだことを、本当は神様に感謝しなくてはいけなかったのでは?
そんなことを、今これを書いていて、はじめて思った私です。
充分にフィンランド人の素質があるんじゃね、自分・・(笑)
