いやいや、ちょっぴり驚いたことがあったんです、さっき。
実は私ね、判を押したように、来る日も来る日も同じ日課を繰り返しているんですよ。
何も変わらない、昨日も今日も明日も同じっていう。
まあ、仕事をしている人なら誰もが似たようなものかもしれませんが、ひとつだけ違うのは、私は他人とはしゃべりません。
今週になって、家族以外の人としゃべったのは、皮膚科の先生と受付の女性だけかなあ。
あ、電話でマンション管理会社の人とも数分しゃべったっけ。
そんな感じで、毎日を過ごしています。
あとはたまに実母、実姉と電話で話をする程度。
私は夫の会社の仕事はしていますが、在宅勤務なので、誰とも会わないし、しゃべらない。
毎日マンションの箱の中で、ひっそりと生きている感じです。
以前の家の近所には、息子や娘のママ友がいたりして、ランチしたりもありましたが、それも次第に少なくなって、今の場所に引っ越してきてからは、もうリアルで話す人も会う人も、完全にいません。
そんな感じなので、もうね、ちょっとおしゃれしてお出かけとか、スイーツとかカフェとかにも興味はほぼなく。
顔にシミやしわが増えてきても、以前は気にしていましたが、今はまったくもって知らんぷり。
まあ、体重はいろんな病気が怖くなってきたので気にはしていますが、美容のためにコントロールしようなどとはこれっぽっちも思わず。
女を捨てたのはとっくの昔ですが、今は人のあるべき姿を辛うじて保っているなあというレベル。
誰にも迷惑がかからなければ、暑くなってきたので裸でその辺を歩いていても抵抗はないんです、恐ろしいことに。
逮捕されちゃうのでね、やりませんが(笑)
と、前置きが長くなりましたが。
そう、びっくりしたことがあって。
どのくらいぶり?
たぶん15年ぶり、いや20年ぶりくらいかなあ。
高校時代の部活仲間から電話があったんです、さっき。
いやあ、声のトーンは少し変わったけど、しゃべり方が何も変わっていない。
なんで電話番号知っているのさ?
やだ、前に聞いてしゃべったことあるじゃん。
そんな会話からはじまって。
妙な汗をかきながらも、懐かしさもたっぷりで、全然嫌な感じが無くて、むしろ意味のわからない高揚感もあり。
いやあ、彼女と、そしてその仲間たちと過ごした濃密な3年間が、電話を切った後、今少しだけど蘇ってきています。
当時からたぶん、ほんとは30歳は超えているだろうと疑っていたくらい大人だった彼女。
だらだらとしゃべるわけでもなく、きちんとメリハリを付けて、夕方の時間なので、きっちりと30分たらずで電話を切りました。
本当に、大人なんですよ。
元気なの?と聞かれた私。
いやあ、いろいろあったよ~、ほんとジェットコースターのような人生だからさ。
笑って、昔からそうだったよねと言われた後で。
「で、ジェットコースターは、今どのあたりの位置にいるの?」
この見事な返し。
惚れてしまいそうになりますね。
「なんとか上の方の位置にいるかな」
「そっか、それなら安心したよ」
心のままをそのまま言葉にする私と、うまく傷つけないようにやさしく何かにくるむようなやりとりをする彼女。
部長だった彼女は、暴れ馬のような副部長の私の手綱をいつだってしっかりと握っていました。
私のこれまでの人生で、安心して自分を委ねられた唯一の人だったかもしれません。
電話の内容は、もう60歳が目前に迫ってきたというわけで、そろそろまたみんなで会おうよという話でした。
とりあえず、近々ふたりで会わない?
いいよ、いいんだけどね・・
この、女でもヒトでもなくなりつつある自分を、誰かに見せるのはちょっと・・
びっくりするよ、きっと。
笑った彼女。
もう今それを聞いたから大丈夫、びっくりしないよ、だから会おう。
また連絡するからと言って、超久しぶりの会話が終わりました。
嬉しかった、素直に。
でも困った。
ちょっと、ちょっと!
今日からきちんと肌の手入れと、お腹の肉を何とかしなくちゃ。
まずはこの数日で、ヒトであることを取り戻します!